2016/03/17 スパイスの魅力
古代ギリシャでは、「気品のある清々しい香りを持つタイムが人間の能力を高める力がある」と信じられていたことから、勇気のシンボルとされていたとのこと。実際、「タイム(Thyme)」の語源の一つは、ギリシャ語で「勇気」を表す「thymos・thymus」に由来しています。
そして、その言い伝えはローマ時代を経て中世ヨーロッパの騎士道の時代まで続き、女性は戦いに出る騎士や戦士を励ます意味合いを込めて、タイムの小枝を縫いつけた絹のスカーフやタイムの葉を添えた贈り物をしていたと言われています。
その他香料としての使用はもちろん、悪夢を防ぎ安眠を助けるようにと枕の下に敷いたり、来世への旅路を確実なものとするため葬儀の際に棺に入れられたとも言われています。
タイムの香りの主成分は「チモール」という芳香成分で、清々しい独特の強い香りが魅力です。加熱をしても香りが残ることから、シチューなどの煮込み料理やスープ、香草焼きなどのオーブン料理によく使われます。また、臭みをとる効果もあるので、魚料理との相性は抜群。オイルやビネガーに漬けこんだ白身魚のマリネにも最適です。
ミックススパイスにもしばしば使われ、南仏プロヴァンス地方のミックススパイス「エルブ・ド・プロヴァンス」の調合には欠かせないスパイスの一つです。
その他、古くからハーブティーとして飲まれていたことはもちろん、石鹼の香料などにも使われています。
香りの強いタイムはオリーブオイルに漬込んでハーブオイルを作るのもおすすめ。魚介のカルパッチョにかければ、美味しい春メニューの出来上がりです。
世界最古の歴史を誇るタイム
新緑の春は、瑞々しいハーブが沢山出回る季節。今回は春を代表するハーブの一つで、ヨーロッパの料理で最も重要と言われるスパイス「タイム」について紹介したいと思います。
タイムは南ヨーロッパ地中海沿岸原産のシソ科イブキジャコウソウ属の多年生植物。「古代エジプト時代、ミイラを作成する際に香辛料が使われていた」という話はこれまでの記事に度々登場しましたが、タイムもミイラを作成する際の防腐剤として使われていたと言われており、世界で最も古い歴史を誇るスパイスの一つです。
古代ギリシャ時代には、既に調理用のスパイスとして利用されていた他、入浴時や神殿で焚く香としても使われていたとのこと。そして、タイムがヨーロッパに浸透したのは、ローマ人が部屋を清めるために用いていたことからと考えられています。