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香辛料貿易で繁栄を遂げた「ヴェネツィア」

2016/06/16 スパイスと歴史

肉食文化の発展で珍重された香辛料

古代ヨーロッパにおいて既に食生活には欠かせない存在だった香辛料。特に、コショウ、クローブ、ナツメグ、カルダモンといったヨーロッパでは自生しないスパイスは、インド、東南アジアからの輸入に頼るしかなく、貴重な品でした。中世に入ると、ローマ帝国の滅亡、イスラム勢力の勃興、十字軍など、東西交流を難しくさせる様々な要因が重り、ますます珍貴なものになっていったといいます。

古くからヨーロッパでは肉や魚が食べられていましたが、12世紀に入ると、内陸まで食材を運んだり、冬期に備えたりするための長期保存が一般化し、肉食文化が一気に発展しました。肉の味付けや保存のためにコショウやクローブなどの香辛料が必要となり、特に上流社会において多量に用いられるようになりました。

こうして、肉食文化の発展と共に需要が高まった香辛料は、インドや東南アジアからムスリム商人により地中海に運ばれ、レヴァント貿易(東方貿易)で主にヴェネツィアの商人によってヨーロッパにもたらされるようになりました。

貿易でルネサンスの中心都市へと発展したヴェネツィア

イタリア北部に位置する水の都ヴェネツィア。その歴史はローマ帝国の崩壊後、侵略者の手を逃れてきた人々が住み着いたことから始まりました。彼らはその恵まれた水運を利用して貿易を始め、10世紀後半からはイスラム諸国とも商業条約を結び交易を拡大、その貿易圏はやがて東方のコンスタンティノープルまで広がり、ルネサンス都市への絹や香辛料を供給する貿易の都となっていきました。

また、貿易は画家たちに貴重な顔料をもたらしました。貿易港としての自由な気質は色彩豊かな絵画を中心に多様な芸術を育み、ヴェネツィアは経済的にも文化的にもルネサンスの中心都市になっていったのです。

ヴェネツィアの繁栄、そして衰退

運送が容易な上、原産地では安価な香辛料がヨーロッパでは非常な高値となり、香辛料貿易は魅力的な商売でした。そこで、貿易で着実に力をつけていたヴェネツィアは、シルクロードから繋がる陸路と海路を結ぶ重要な交易地点から他のヨーロッパ人を締め出し、地中海における香辛料貿易を独占するようになります。

こうして、香辛料貿易で驚異的な繁栄を成し遂げ、ヨーロッパにおける重要な地位を確保するようになったヴェネツィアですが、1453年にオスマン帝国がコンスタンティノープルを占領し香辛料貿易の航路が断たれたことで、その不動の地位は終焉を迎えます。

その後の大航海時代の幕開けで、ヨーロッパにおける香辛料貿易の主役の座は入れ替わりますが、中世イタリアがヨーロッパに与えた影響は非常に大きかったと言えます。香辛料貿易で成功したヴェネツィア、貨幣経済を発展させたジェノヴァ、フィレンツェなど、商業と金融を通じて世界の富が集まったこの時代のイタリアの都市は、現代における資本主義のさきがけとなったとも言われています。