2016/09/15 スパイスの魅力
日本においては、明治維新以降の近代化でカレーが普及するまでクミンはそれほど馴染みのないスパイスでしたが、実は、世界最古のスパイスの一つと言われるほど歴史は古く、紀元前16世紀の古代エジプトでは、シナモン、アニス、クローブなどと同様、ミイラ保存のための防腐剤として使用されていたといいます。
また、中世のヨーロッパでは、恋人の心変わりを防ぐものと信じられ、男女間の貞操を象徴するものとされていたとのこと。そのため、結婚式の際にはポケットの中にクミンを忍ばせて臨む習慣もあったとか。
現在は、インドをはじめ、トルコ、レバノン、モロッコ、メキシコなど、エスニック料理に多く使われますが、ヨーロッパでも、煮込み料理やスープ、パン、ソーセージに至るまで幅広く利用されています。オランダのライデンには、クミンを練り込んで作った「ライツェ・カース(Leidse kaas)」と呼ばれるチーズがあり、クミンのスパイシーさですっきりした風味が味わえる一品です。
クミンはシード、パウダー共に、肉料理の下味や臭み消しに効果的だと言われますが、クミンの香りを最大限に引き出すには、何と言っても「スタータースパイス」として使うのが効果的です。
「スタータースパイス」とは、調理の最初に油で熱し、香りを引き出して使うスパイスのことで、クミン・シードはその代表的存在と言われています。クミン・シードをスタータースパイスとして使えば、いつものカレーもインド風に仕上がり、シンプルな炒め物にはエキゾチックな風味が加わります。
また、クミン・シードをそのままパラッと振りかけるのも粋な使い方です。炒め物やボイル野菜、肉料理、サラダなど、クミン・シードをサッと振りかけるだけで一味違った風味を楽しむことができます。
近年のエスニック料理ブームで再注目されているクミン。カレーだけではなく、シンプルな料理をワンランクアップさせる魅力を持つクミンは、エスニック料理好きの方はもちろん、そうではない方もぜひ押さえておきたいスパイスです!
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クミンは、エジプト、地中海沿岸を原産とするセリ科の一年草植物。種子(果実)の「クミン・シード(cumin seed)」はスパイシーな香りの強さと辛味、苦味を特徴とし、南アジア、中東、中央アジアの料理によく利用されます。カレー粉やチリパウダーの原料としても欠かせないスパイスであり、特に、インド料理には必須のスパイスと言われています。
コリアンダー、ディル、キャラウェイなど、主に他のスパイスとミックスして使われ、インドの「ガラムマサラ」もクミンを使った有名なミックススパイスの一つです。