2016/12/15 スパイスとイベント
ヨーロッパには、古くから食材の保存を目的としたスパイスの利用と共に食文化を発展させてきた歴史があり、スウィーツも同様にスパイスやドライフルーツをふんだんに使い、保存に適した形で発展してきたようです。例えば、イギリスの伝統的スウィーツ「ミンスパイ(Mince pie)」は、古くはクリスマスの時期にキリストの誕生を祝うための料理とされ、肉を保存する方法としてスパイスや果物を混ぜて作ったのが始まりとのこと。現在は具材に肉は使われず、みじん切りのドライフルーツにシナモン、クローブ、ナツメグ等の香辛料、ブランデー、砂糖、ケンネ脂を加えて煮込み数日間寝かせたものが「ミンスミート」と呼ばれます。
このミンスミートは「クリスマスプディング」にも使われ、生パン粉、小麦粉、卵、ナッツ類、ラム酒などと混ぜ合わせます。生地は熟成と加熱を繰り返して作られ、仕上げに熱したブランデーでフランベさせます。熟成中にアルコール度が増すため、濃厚且つ芳醇な味わいが特徴です。生地を加熱する前に指輪やコインを混ぜ、家族全員で1回ずつ願い事を唱えながら時計回りにかき回すという儀式を行なうそうで、切り分けた時に何が入っているかで運勢を占うのだとか。
ドイツにも「シュトレン(Stollen)」と呼ばれる、レーズンやレモンピール等のドライフルーツに、ナッツ類とマジパン、バニラ、メース、カルダモンといったスパイスを加えて作る、ずっしりとした発酵菓子があります。オランダでも「ストル(Stol)」と呼ばれ伝統的に食べられ、ドイツではクリスマスの前から少しずつスライスして食べながらクリスマスを待つ習慣もあるそうです。
もう一つ、スパイスを使ったスウィーツの流れとして「ジンジャーブレッド」があります。「ジンジャーブレッドマン」と呼ばれる人型のクッキーは、クリスマスのモチーフとしても有名です。イギリスやアメリカで「ジンジャーブレッド」と呼ばれるものは、必ずしもジンジャーだけを使用しているわけではなく、各地域に根ざした呼び名とスパイスのブレンドが存在します。
例えば、フランスの「パン・デピス(Pain d’épices)」。「エピス(épice)」はフランス語でスパイスを意味し、「香辛料を使ったパン」という言葉に由来するとのこと。パン・デピスはクッキーに近いものとケーキに近いもの、原料も小麦粉を使うもの、ライ麦粉を使うものに分けられるそうで、シナモン、ナツメグ、アニス、クローブ、ジンジャー等のスパイスと大量の蜂蜜を加えて作られます。
ドイツの「レープクーヘン(Lebkuchen)」もジンジャーブレッドの一種で、オレンジやレモンの皮、ナッツ類、スパイス、蜂蜜を使い、チョコレートを使うのが特徴です。スパイスもシナモン、クローブ、アニス、カルダモン、コリアンダー、ジンジャー、ナツメグ等様々な種類が使われます。このレープクーヘンを使って作るのが「ヘクセンハウス(Hexenhaus)」と呼ばれるお菓子の家で、元々は「ヘンゼルとグレーテル」に出てくるお菓子でできた魔女の家を指す言葉だったとか。クリスマスシーズンには、ドイツだけではなく欧米各地でその土地のジンジャーブレッドで作られたお菓子の家が様々な公共施設で飾られます。
その他にも、チェコの「ペルニーク(Pernik)」、ロシアの「プリャーニキ」、ベルギーの「スペキュロス(Speculaas)」、スウェーデンの「ペッパーカーカ(Pepparkaka)」など、様々な国のジンジャーブレッドがあります。
ヨーロッパの伝統的クリスマススウィーツはじっくりと時間をかけて作るので、クリスマスムードを徐々に盛り上げる醍醐味があります。ぜひ、チャレンジしてみてください!
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クリスマスのスウィーツといえば、生クリームをふんだんに使ったクリスマスケーキやブッシュ・ド・ノエルというイメージが強いと思いますが、ヨーロッパの伝統的なクリスマススウィーツはスパイスを使ったものが多く、どちらかというと見た目は質素です。