2017/08/17 スパイスの魅力
アップルパイやシナモンロールなど、主に洋菓子に使われるお馴染みのスパイス「シナモン」。こちらはスリランカのセイロンで栽培される肉桂(ニッケイ)の樹皮から作られるスパイスのことで、「セイロンシナモン」とも呼ばれます。紀元前4000年頃からミイラの防腐剤として使われ始め、世界最古のスパイスとも言われることは、これまでの記事でも度々触れてきました。
スパイスには外樹皮と呼ばれる一番外側の皮が使われますが、スティック状のいわゆる「シナモンスティック」は、この外樹皮の内側にさらに樹皮を重ねて丸めたものを乾燥させて作られるため大変手間がかかっており、値段も高級とされています。洋菓子のイメージの強いシナモンですが、インドのミックススパイス「ガラムマサラ」や「チャイ」の香りづけにも欠かせないスパイスです。
実は、「シナモン」という名称で流通しているものの中には別品種のものも存在します。これはシナモンの近縁種「シナニッケイ」で、「カシア」という別名を持ちます。こちらは、中国、タイ、ベトナムなど、東アジア・東南アジアで生産されており、セイロンシナモンに比べ色みが赤く、樹皮が肉厚であることが特徴です。スティック状のものは外樹皮をそのまま細く丸めて乾燥させるため、手間がかからず低コストに抑えられることから、一般に低価格で流通している「シナモン」はシナニッケイであることが多いと言われています。
では、「ニッキ」は?というと、こちらは日本産の肉桂のことを指し、ニッキ飴や八つ橋に使われます。江戸時代にシナニッケイの樹木が伝来し、日本で栽培が始まったことから、日本産の肉桂、通称「ニッキ」が流通するようになったとのこと。収穫量が少ないためシナモンより高価であるとも言われています。
シナモン、シナニッケイ、ニッキ、いずれもクスノキ科の常緑樹であり近縁種でもあるため、似ている部分が多いのも事実。しかし、三者にはそれぞれ決定的な違いもあります。例えば、シナモンとシナニッケイは幹の樹皮を乾燥させて使うのに対し、ニッキは根っこの部分を使うのが特徴です。
成分にも決定的な違いがあり、シナモンの独特な風味の元であるオイゲノールという成分は、セイロン産のシナモンのみに含まれる成分で、シナニッケイとニッキには含まれていません。
また、味や風味にもそれぞれ違いがあります。シナモンは甘い香りとマイルドな風味を特徴とし、味に辛味はありません。シナニッケイは濃厚な甘い香りとスパイシーな後味を特徴としています。ニッキは甘い香りでありながら、爽やか且つ強い辛味を持ちます。
混同しやすいスパイスと言われていますが、3種3様の個性があり、スパイスの奥深さを感じさせられますね。
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以前、「スパイスの呼び名あれこれ」という記事で、似ているけれど実は別品種のスパイスとしてご紹介した「シナモン」と「ニッキ」。今回は、これらの違いをさらに深堀してみたいと思います。