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神秘のスパイス・アイランズ「モルッカ諸島」

2019/03/22 スパイスと歴史

古代から近代にかけて、スパイスが貴重且つ高価なものとして扱われていたことは、今までにも何度かお話をしてきました。中でも「世界の4大スパイス」と呼ばれる「コショウ」「クローブ」「ナツメグ」「シナモン」は、古代から貴重な貿易品として金銀同様に扱われ、特に中世から近代にかけてのヨーロッパでは珍重されました。このことを裏付けるのが15世紀に始まる大航海時代であり、これらのスパイスが世界の歴史を動かしたと言っても過言ではないでしょう。今回は、その舞台となるインドネシアの「モルッカ諸島」のお話をしたいと思います。

ヨーロッパ人が思いを馳せた未知の土地

「モルッカ諸島(Malucca Islands)」はインドネシア語では「マルク諸島(Maluku Islands)」と呼ばれ、現在のインドネシア共和国のセラム海とバンダ海に分布する約1000の島々で構成されている群島です。

クローブとナツメグの原産地であるモルッカ諸島は、「スパイスの王様」と称されるコショウの原産地インド、シナモンを特産とするセイロン島に並び、スパイスの歴史を語る上で最も重要な土地の1つです。さらに言えば、クローブはモルッカ諸島のテルナテ島(Ternate Islands)など5つの島でしか産出されず、ナツメグはモルッカ諸島のバンダ諸島でしか産出されなかったと言い、非常に限定された貴重な土地だったと言えます。

古くは、モルッカ諸島の人々も独自に中国などのアジア諸国と香辛料貿易を行っていましたが、13世紀頃からイスラム商人による貿易が支配的になります。中世のヨーロッパでヴェネツィア商人が香辛料貿易を通じて莫大な富を得ていたことは有名な話ですが、実は、香辛料貿易で最も利益を得ていたのは、海路陸路共に東西交易の中継地であったアラビアやペルシャのイスラム商人だったようです。当時のヨーロッパの人々にとってスパイスの原産地はまだ未知の土地でしたが、イスラム商人は利益を独占するため原産地を隠し通すことでスパイスの価格をつり上げていたのだとか。

1453年にオスマン帝国が地中海を制圧すると、ヨーロッパにおけるスパイスの入手が困難になり、いよいよヨーロッパ諸国による独自の貿易ルートの開拓が始まります。こうして大航海時代が幕を開け、スパイスをめぐる争奪戦が始まるのです。

神秘のスパイス・アイランズの悲劇

その争奪戦の舞台となったのがモルッカ諸島で、ヨーロッパでは1440年頃に「スパイス・アイランズ (Spice Islands 香辛料諸島)」として知られるようになったと言われています。原産地が明らかになったことで、16世紀に入るとヨーロッパの国々がこの地に次々と進出を始めます。

最初にモルッカ諸島に到着したのはポルトガル、16世紀初頭のことです。次いでスペインも進出しますが、その時点で既にポルトガルによってスパイスの産地や交易地の実権が握られていたとのこと。17世紀には、今度はオランダが勢力をのばし、シナモンの原産地であるセイロン島とモルッカ諸島からポルトガルを追い出し、スパイスの栽培・取引の独占を始めるようになります。イギリスもモルッカ諸島への進出を試みますが、1623年のアンボイナ事件での敗北を機にインドへ主力を移し、綿や茶を主力商品とした政策に切換えることに。結果、スパイスに関してはオランダが実権を握り、独占することになります。

この間、スパイスの権益をめぐる抗争が島の住民を巻き込んだ形でくり返され、住民のほとんどは虐殺されたり奴隷にされるなど、ほぼすべてのものを失ったとも言われています。ヨーロッパの人々がかつては思いを馳せていた神秘のスパイス・アイランズは悲劇の土地と化してしまったのです。

しかし、18世紀後半、クローブやナツメグの苗木を密かに盗み出したフランスが、当時植民地としていたモーリシャスやアフリカの島など、他の土地への移植に成功したことで事態は変わっていきます。1949年に正式に独立を承認されたインドネシアに譲渡されるまで、オランダによるモルッカ諸島の支配は続きますが、スパイスの栽培地が広がることにより価格・価値共に下がったことで、長きに渡ったスパイスをめぐる抗争も19世紀には終焉を迎えたのでした。

悲劇の歴史も多様な食文化の礎に

このような悲劇的な歴史を持つモルッカ諸島ですが、ヨーロッパをはじめとする国々が進出したことで、様々な食材がもたらされたのも事実です。

スペインはメキシコからトウガラシやトマト、トウモロコシ、ジャガイモを持ち込みました。ポルトガルはアフリカやブラジルからピーナッツ、パイナップル、サツマイモ、キャッサバを、オランダはキャベツ、ニンジン、カリフラワーといった野菜を持ち込みました。また、古くからの香辛料貿易により、中国からは大豆製品や麺類、インドからはタマネギ、ニンニク、ナスといった野菜、クミンやショウガなどのスパイスももたらされました。これらの食材がバラエティに富んだインドネシアの食文化を生み出したとも言えるでしょう。

ちなみに、現在は世界の熱帯・亜熱帯の地域で幅広く栽培されているクローブとナツメグですが、もちろんインドネシアでも栽培されており、原産地ならではのクオリティの高さを誇っています。