2019/10/17 スパイスの魅力
まず1つ目の、「セイロンシナモン(Cinnamomum verum)」。こちらはスリランカ原産で、セイロンはスリランカの旧称です。学名の「verum」はラテン語で「真実の」という意味であり、そのまま読めば「真のシナモン」ということになります。実際、シナモンと言えばスリランカで採られるセイロンシナモンを指す、と言われることも。
セイロンシナモンの見た目は明るい茶色をしており、スティック状の商品は、「外樹皮」または「コルク層」 と呼ばれる一番外側の樹皮を取り除き、「内樹皮」と呼ばれる薄い樹皮を何層にも重ねて丸めながら形を整え、乾燥させて作られます。手で崩せるほど柔らかく、きめ細かく繊細という特徴を持ちます。
その繊細さは香りにも表れており、温かみのあるほのかな甘い香りの中に柑橘系の香りがかすかに漂う品のある香りが特徴で、「森のような香り」と形容されることも。そのため調理の間に香りを失いやすいという性質も持ちます。
一方、2つ目のシナモン「カシア」。こちらは「シナニッケイ(Cinnamomum cassia)」というセイロンシナモンの近縁種であり、「チャイニーズシナモン」と呼ばれることも。中国、インド、ベトナム、インドネシアなどアジアの幅広い地域で生産されており、セイロンシナモンよりも比較的安価であるとされています。ちなみに、アメリカやイギリス、インドでシナモンの名称で流通している商品のほとんどはカシアであると言われています。
セイロンシナモンと近縁種とはいえ、見た目や香りにははっきりとした違いがあります。色は明るい赤茶色、外樹皮は残したまま使われ、スティック状のものはそのまま細く丸めて乾燥させて作られるため、肉厚で木のような質感を持ち、手では崩せないほどの固さです。香りも見た目同様に強く、濃厚な甘さとスパイシーさを特徴としています。
このように、はっきりと違いのある特徴を持ちながら、いずれもシナモンとして流通しているため、特徴を生かした使い方がされていない可能性もあります。例えば、繊細な香りを楽しむセイロンシナモンは、アップルパイやクッキーといったお菓子、紅茶やコーヒーなどのドリンク、またはシナモンシュガーとして使うのが好ましいです。一方で調理をすると香りが飛びやすいので、料理には不向きと言えそうです。その点では濃厚な香りを持つカシアは料理向きと言えます。肉料理、煮込み料理との相性は抜群で、特に、カレーなど、スパイシーさを生かしたインド料理にはピッタリです。
2つのシナモン、用途や好みで使い分けてみてはいかがでしょうか?
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古代から使われてきた歴史を持ち、貴重なスパイスとして扱われていた「シナモン」。現在もお菓子やドリンクなどに利用される親しみのあるスパイスです。
実は、シナモンの名称で流通しているものには主に2種類あります。それは「セイロンシナモン」と「カシア」です。共にクスノキ科ニッケイ属(Cinnamomum)に属し、いずれも紀元前から使われていたスパイスと言われています。今回はこの2つのシナモンについてお話ししたいと思います。