2020/08/20 スパイスの魅力
ガーリックといえば、なんといっても独特の強い香りが特徴です。とはいえ、意外にも丸のままでは香りは全くせず、カットしたり、すり下ろすことで初めてあの独特の香りが発生します。ガーリックの細胞を壊すような加工を行うことで細胞内の成分と酵素が反応し、独特の香りと辛味の元となるアリシンという成分が発生するのです。そして、加熱をするとその香りは甘く穏やかになり、辛味も弱まります。
また、独特の香りでありながら、なぜか食欲をそそる香りでもあり、さらには肉類や魚類の生臭さを消す役割もしてくれます。このように、ガーリックは加工の仕方や用途によって香りや味が変化をするという面白い特性を持っています。
本来はこの独特の香りを楽しみたいところですが、それでもちょっと香りがきつすぎるな、という方にはパウダータイプがおすすめです。生タイプに比べて香りが穏やかで、手や調理器具に匂いがつきにくく手軽に使えます。ただし、ドライタイプのガーリックは湿気に弱いので保存に注意が必要です。
ガーリックは、洋の東西を問わず、世界中の様々な料理に使われていますが、ガーリックが使われる料理といえば、やはりイタリア、スペイン、南フランスといった地中海料理が代表的。特に、オリーブオイルとガーリックは鉄板の組み合わせであり、地中海料理の必須アイテムともいえます。
例えば、シンプルなガーリックトーストはこれらの国でとてもポピュラーな一品です。それをアレンジしたブルスケッタをはじめ、スペインではトマトと生のガーリックをすり下ろしたものをバゲットに載せて食べる「パン・コン・トマテ(Pan con tomate)」が朝食メニューの定番でもあります。また、オリーブオイルとガーリックといえば、パスタ料理には欠かせないアイテムですし、アクアパッツァやアヒーリョ(Ajillo)といった魚介料理、その他肉料理など、ほとんどの地中海料理に使われています。
ちなみに、オリーブオイルにガーリックの香りを移すには、オイルを熱する前にガーリックを投入するのがポイントで、弱火でじっくり油に香りを移していきます。加熱しすぎると焦げてしまい、せっかくの風味を損なってしまうので注意が必要です。
ガーリックは、単体ではもちろん、他のスパイスと組み合わせて使うとさらに奥行きのある味わいになります。例えば、コショウとの相性は抜群で、煮る、焼く、炒める、揚げる、いずれの調理法にも対応できる手軽さや、スープや麺類、ドレッシングに至るまで用途もバラエティに富んでいるのが魅力です。
イワシやアジ、サバといった青魚の臭み消しに効果的なガーリックですが、ここにタイムやローズマリー、オレガノ、バジルといった爽やかで清涼感のあるハーブをプラスして作る青魚の香草焼きも絶品です。食欲をそそるガーリックと爽やかなハーブの香りの組み合わせが絶妙なバランスを生み出します。
また、様々なスパイスをふんだんに使うカレーとの相性も抜群。スパイシーなターメリックやクミン、クセのあるコリアンダーといったスパイスと相性が良いことに加え、香りの強いガーリックが逆に様々なスパイスの香りをまとめる役割をしてくれます。
ぜひ、ガーリックを様々なスパイスやハーブと組み合わせて、料理のバリエーションを楽しんでみては?
スパイス物語に登場したスパイスを購入したい方はこちらから
ガーリックとは、ズバリ「ニンニク」のこと。学術的には、ヒガンバナ科ネギ属の多年草植物の「鱗茎」と呼ばれる地下茎が肥大した部分のことを言います。ですので、特に生タイプのものはスパイスというより香味野菜という印象を持つかもしれません。世界的にも生で使われることが多いのですが、ヨーロッパではパウダーやスライスといったドライタイプのものもよく利用されるようです。
原産地は中央アジアと言われていますが、世界の広い地域で古くから使われていたスパイスであり、古くは紀元前3200年頃に古代エジプトで栽培されていたという記録があるそうです。日本へは中国を経て8世紀頃に伝わったと言われており、その中国では紀元前140年頃には使われていたとのことで、現在も世界の8割を占める主要な生産国となっています。その他、インド、エジプトでも生産されており、日本では青森県が国産の80%を誇る生産地となっています。