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SPICE STORYスパイス物語

世界一高価なスパイス「サフラン」

2021/07/15 スパイスの魅力

サフラン(学名Crocus sativus)とは、西アジア原産のアヤメ科クロッカス属の多年草で、その雌しべを乾燥させたものがスパイスとして利用されています。学名に「クロッカス」とありますが、観賞用のクロッカスとは別品種です。サフランは古くから利用されてきたスパイスで、その歴史は紀元前にまで遡ります。本格的に栽培が始まったのは紀元前3000年頃の青銅器時代であると言われており、スパイス、香料、染料として使われていたといいます。西アジア原産とされていますが、最初に栽培が行われたのはギリシャのクレタ島という説が有力(諸説あり)。サフランは古くから珍重されていたと言われており、古代ギリシャでは、サフランの黄色は王族だけに許されたロイヤルカラーであったという話もあります。

現在、サフランは世界の広い地域で生産されており、イラン、スペイン、インド、ギリシャの順で生産量が多いとされ、最大生産国であるイランは世界生産量の約半分、イランとスペインで約80%を占めるとのこと。輸出量で言えば、イランだけで世界シェアの90%を占めているとも言われています。もちろん、その他の国や地域でも生産されていますが、高級品に絞った極少量生産という形をとっているところが多いようです。ちなみに、日本へは江戸時代に伝わり、明治時代に大分県竹田市にて本格的に栽培が始まったとのこと。同地の栽培の歴史は115年以上を誇り、現在も日本国内の約8割以上が生産されるサフランの名産地となっているのだそう。海外とは異なる栽培方法を確立しているとのことで、雌しべの大きさ、鮮やかな色、優れた香りが評価されており、元々高価な海外産のものよりもさらに高価格となっているそうです。

サフランが高価であることの納得の理由

では、サフランはなぜ世界で最も高価なスパイスと言われているのか。それは希少性の高さと、手作業による膨大な手間がかかっていることにあります。サフランは20〜30cmに成長し、一株に最大4つの花をつけます。それぞれの花には長さ2.5〜3cmの3本に枝分かれした1本の雌しべがあり、それらを一つ一つ手で摘み取り、乾燥させたものがスパイスとして利用されます。サフランの花が咲くのは1年に1度、秋の半ばのみ。その期間も1〜2週間と非常に短く、夜明けに開花した花はすぐに枯れ始めてしまうので、摘み取り作業には迅速さと熟練が必要とされます。また、採取した雌しべはすぐに乾燥させる必要があり、それを怠ると売り物にならなくなるのだそう。

さらに、サフランの希少性を物語るのがその収穫量。花の開花状態にもよるとされ、1kgのサフランを得るためには約15万〜30万個の花が必要とも言われています。また、そこにかかる時間は約40時間とも。このように、開花期間が短い中、収穫量を確保するためには何千もの農作業者が1〜2週間の間昼夜を通してサフランの収穫に携わる必要があり、しかも全て手作業で行われるということで、気の遠くなるような工程を経てサフランが流通されているということがおわかりになられたと思います。

高価であるがために偽装品も出回る

このように、希少性の高さと膨大な手間のかかったサフランが高価になっている一方で、偽装品や粗悪品の流通が歴史的に繰り返されていることも問題になっています。悪質な手口によるサフランの偽装は古くから行われていたといい、中世ヨーロッパでは偽装品の販売は死刑に相当したという話もあります。残念ながら現在でもサフランの品質偽装は一部で続いているそうで、例えば、サフランの雌しべ以外の部分を混ぜたかさ増しや、安価な輸入品を混ぜた商品を純粋国産と偽る、といったことが行われているというのです。

このような品質偽装を防ぐため、サフランには産地による等級基準に加え、色(クロシン)、風味(ピクロクロシン)、香り(サフラナール)の成分分析検査によるISO3632という国際標準化機構の認証を受ける制度が設けられています。生産量に加え品質の高さも誇るイランやスペイン、インドのカシミールといった産地には独自の等級制度もあり、上級から下級まで呼び名も決まっています。スペインでは最高級の純粋国産サフランは「ラ・マンチャ(La Mancha)」と呼ばれ、パッケージにPDOと呼ばれるEUの原産地呼称保護制度の認証章を付けて生産者を守るべく差別化を図っているとのこと。

サフランの雌しべは鮮やかな深紅の柱頭と黄色い花柱で形成されていますが、色、香り、風味といった重要な成分は柱頭部分に集中しています。そのため、柱頭の赤色と花柱の黄色のバランスや柱頭の赤色の鮮やかさ、さらに雌しべ以外の植物や異物が混入されていないかなどは、ISO規格においても産地等級制度においても重要なポイントとなっており、市場価格にも反映されているとのこと。

とはいえ、実際にはパッケージにISO認証や等級が表示されていない商品が多く流通しているのも事実。その背景にはISO規格による成分分析といった科学的な情報に頼るよりも、香りや味、乾燥度合などはワイン鑑定士のように、熟練の経験と知識に基づく判断に任せるべきだと考える生産者や流通業者が少なくないということがあるようです。このような生産者や流通業者の考え方は、オリジナリティのある上質な商品を生み出す一方で、偽装品や粗悪品の流通に利用されてしまう危険性を孕んでいるとも言えるでしょう。

そこで、私たち消費者も知識を身につけるべく、上質なサフランを見分けるポイントをご紹介したいと思います。上質なサフランは鮮やかな深紅をしており、形が盛り上がっていて、僅かな潤いと弾力があるとのこと。色が赤レンガ色になっていたら古くなっている証拠で、前年度の売れ残りである可能性もあります。また、黄色やオレンジ色が多いと花柱でかさ増しされている可能性があります。さらに、香りの高さ、長さが揃っていることも重要なポイントです。

サフランの魅力はその色と風味にあり!

サフランの特徴は、料理を引き立たせるその色と風味にあります。サフランの鮮やかな黄色は「クロシン」という水溶性の色素成分によるもので、料理を美味しそうに見せてくれます。上品とも干草のようなとも形容される独特の香りと風味は、他のスパイスでは代用できない魅力があります。

サフランは主に、南ヨーロッパ、アラブ、南アジア、中央アジア、北アフリカで料理の色付けや風味づけのスパイスとして使用され、米料理や煮込み料理に多く使われます。米料理ではスペインのパエーリャを筆頭に、イタリアのミラノ風リゾット、イランのチェロウ・ケバブ(ケバブにライスを合わせた料理)、インドやバングラデシュでポピュラーなビリヤーニなどに欠かせないスパイスとして使われています。魚介類との相性も抜群で、南仏プロヴァンスの名物料理ブイヤベースやスペインのサルスエラ(魚のシチュー)に、モロッコではクスクスや煮込み料理のタジンに使われています。

また、料理だけではなく、トルコではサフランティーとして飲まれているそうで、インドのラッシーのようにミルクに混ぜたり、紅茶に混ぜるなど、ドリンクとしても楽しむことができます。少し色出ししたサフランに蜂蜜を混ぜてアイスクリームやヨーグルトのソースにしたり、ケーキなどの焼菓子の生地に混ぜるなど、デザートにも応用できます。

サフランの色素は水溶性で油に溶けにくいので、米料理などには事前に水かお湯に浸けて色と香りと味を十分に出してから使うのがポイントです。浸けておく時間は30分くらいでOKですが、長い時間水に浸すほど色が出ます。ただし、24時間以上浸してしまうと香りが失われてしまうので注意が必要です。ちなみに、サフランの色の濃度はサフランの量ではなく、あくまでも抽出する時間の長さによるので、使用する量は適量で大丈夫です。また、サフランはとてもデリケートなスパイスで、香りが飛びやすく劣化しやすいという特徴があります。特に、高温、湿気、直射日光は劣化を早める原因となるので、アルミホイルに包んで密閉容器に入れ、日光の当たらない冷暗所で保管すると比較的香りが長持ちします。

以上、「サフランは高価なスパイス!」とさんざん話してきましたが、実際に1回の料理に使用する量は雌しべ1本分ほどで済みますので、ぜひ気軽に使ってみてくださいね。