2024/07/05 スパイスと料理
例えば「ナツメグ」。ハンバーグを作る時にしかナツメグの出番はないと思っている方も多いかもしれませんが、ハンバーグに合うということは当然ひき肉料理全般と相性が良いわけです。「ハンバーグにはナツメグ」という定説があまりに有名なため、これが盲点になっているのかもしれません。
ナツメグはそのエキゾチックな芳香と強い風味が特徴で、ほんのりとした甘さもあるスパイスです。肉の臭み消しに活躍し、素材の旨みを引き出してくれるので、ハンバーグはもちろん、ミートボールやミートローフといったひき肉料理の下ごしらえにピッタリです。
また、トマトケチャップの原料の主要スパイスでもあるので、トマトベースのロールキャベツやミートソースとも高相性。とりわけロールキャベツに関しては、キャベツを調理する際に発生する独特の臭みも消してくれるので、まさにロールキャベツのためのスパイスと言えます。野菜といえば、ジャガイモ特有の青臭さを消すのにもナツメグが効果的。同時に甘みも引き出してくれるので、マッシュポテトやコロッケなどにもおすすめです。コロッケにはひき肉も入るので一石二鳥ですね。
肉の臭みを消してくれるということは動物性の食材の臭み消しにも効果的で、ほんのりとした甘みは乳製品ともマッチします。クリームシチューやポタージュ、ホワイトソースやチャウダーなど、ミルク、生クリーム、バター、卵などを使う料理とも相性抜群です。
ナツメグは加熱すると独特の刺激的な芳香が弱まり、逆に甘みがより強く際立つという面白い特徴も持っています。その特徴を生かしてパンやクッキーなどの焼菓子にも活用できます。りんごやオレンジといったフルーツ、カスタードとも相性が良いので、フルーツパイやプディングなどにもおすすめです。
次に「シナモン」。こちらは甘い香りが特徴的で、その特徴から「シナモンと言えばお菓子に使うスパイス」というイメージを持っている方も多いはず。実際、シナモンロールやアップルパイといったスウィーツに多く使われているスパイスですが、実はシナモンも肉の臭み消しに効果的で、料理に深みのある香りと味を与えてくれます。ひき肉料理全般の下ごしらえに適しており、ナツメグの代わりにハンバーグに使ってもおいしいのだとか。
また、ナツメグ同様、トマトケチャップの原料に使われているスパイスなので、トマトを使った煮込み料理に適しており、その他オムレツなどの卵料理にもマッチします。野菜で言えば、さつまいもやかぼちゃといった甘さのある根菜類が適しています。
ちなみに、シナモンにはセイロンシナモンとカシアの2種類があり、上品で繊細な香りと風味が特徴のセイロンシナモンは焼菓子をはじめとするスウィーツに、渋みとスパイシーさが特徴のカシアはパンチの効いたインド料理によく使われる傾向があります。セイロンシナモンはカシアよりも高価であることから、一般に流通しているパウダーのシナモンはカシアであることが多いとされています。ですので、パウダーのシナモンであれば、お菓子よりもむしろ料理に使う方が適していると言えそうです。
上記2つのスパイスと比べて若干ハードルが高いのが「クローブ」です。ミックススパイスに使おうと思って買ったはいいけれど、実際何に使えば良いかわからないという方も多いかもしれません。
クローブは甘く濃厚な香りと、ピリッとした辛味と苦味を持つ刺激的な風味が特徴のスパイスです。数多くあるスパイスの中で最も香りが強いとも言われているスパイスなので、香りをつけようとはせず、あくまでも臭み消しの目的で使うことがポイントになります。クローブは肉の臭み消しには最適で、肉料理の下ごしらえに積極的に使いたいスパイスです。あらゆるお肉に活用できますが、特にクセのあるラムやジビエなどに適しています。
また、クローブにはバニリンというバニラと同じ成分を含んでいることから、バニラエッセンスと一緒に使うとバニラの香りを高める効果があるのだとか。バニラの代用としても使えるそうで、意外にもクッキーなどの焼菓子に使うこともできます。その他、オレンジやりんごなどフルーツのジャム作りにも活用できます。
「ナツメグ」、「シナモン」、「クローブ」、それぞれ違う目的やイメージで使われているように見えるスパイスですが、よく見てみると共通点が多く、用途が似ている感じがしますよね。特に、肉の臭み消しに効果的で肉料理と相性が良いという点が共通しています。実は、いずれのスパイスにも「オイゲノール」という成分が含まれている、という共通点があるのです。オイゲノールは臭み消しに効果的な成分で、特にクローブにはオイゲノールが多く含まれおり、オイゲノールはクローブの香りと形容されることもあるそうです。
そのため、これら3つのスパイスはいずれも相性が良く、ミックスして使われることが多いのです。インドの代表的ミックススパイス「ガラムマサラ」やインドのスパイスティー「マサラチャイ」にも使われており、実際、単体よりもミックスして使う方が良いとされています。ちなみに、赤ワインにもオイゲノールが含まれているので、ホットワインにこれらのスパイスをブレンドするのも理にかなっていると言えます。
これらのスパイスは香りが強いので、肉の下ごしらえに使う以外は、ほんの少量、薬さじ1杯程度の量で使うのがポイント、入れすぎると香りが強すぎて料理の味を損なってしまいかねないので注意が必要です。また、白身魚など淡白な素材に使うのも控えた方が良さそうです。
単体でも様々な料理に使えますが、互いに相性が良く、シナモンとクローブ、ナツメグとシナモン、といった使い方で料理の風味に深みを持たせることができるので、セットで持っておくのもおすすめです!
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