2021/10/21 スパイスの魅力
キャラウェイは、西アジアを原産とするセリ科の二年草植物で和名はヒメウイキョウ(姫茴香)。草丈は30〜60cm程に達し、二年目の夏の終わりに花が咲いた後3〜5mm程の三日月型の果実がつきます。この果実の部分を完熟させ乾燥させたものがスパイスとして使われます。「キャラウェイシード」という名前で流通していますが、正確には種子のように見える果実ということになります。ちなみにキャラウェイの葉や根も食用として使うことができます。
キャラウェイは古い歴史を持つスパイスで、石器時代には既に栽培されていたとも言われています。ヨーロッパに伝わったのは紀元前3千年頃とされ、西アジア最古の都市として栄えていたフェニキアの商人によって伝えられたと考えられています。
このように古い歴史を持つキャラウェイには、人や物を引き止めたり結びつけたりする力があると信じられていた、という昔からの言い伝えがあります。例えば、キャラウェイを料理に使うと愛する人が離れていかない、家畜の餌に入れておくと家畜が逃げない、といったものから、キャラウェイの実を入れておいた品物は盗難に遭うことはない、といったものまで、引き止める力で様々なものを守ってくれると信じられていたと言われています。
キャラウェイは見た目や名前に似たものが多く、混同されやすいスパイスとも言われています。そこで、似ているスパイスと比較して、その違いをきちんと知ることにしましょう。
キャラウェイに似ているスパイスとしてあげられるのが、クミン、フェンネル、ディル。いずれもスパイスとして使われるのは果実の部分で、名前にも「〜シード」とつきます。これらのスパイスは全てセリ科の植物から採取されるため、似ている部分があるのもうなずけます。さらに、フェンネルの和名は「ウイキョウ(茴香)」、ディルに至っては「ヒメウイキョウ(姫茴香)」とまったく同じだったりするのでやっかいです。ただ、他のスパイスに比べるとディルシードは形に丸みがあり、色も黒っぽいので見た目に関しては違いがわかりやすいと言えます。
フェンネルシードとクミンシードは形や色もよく似ているので、見た目では判断しづらいかもしれません。そこでキーになるのが香りや風味です。これらに関してはそれぞれ明らかに違う特徴があります。
フェンネルシードは、独特の甘い香りが特徴で、アニスの香りに似ていると言われています。香りが強いので食材の臭み消しに効果的とされ、ラムやマトンといった臭みがきつい肉料理や魚料理に適しています。クミンシードはインド料理に欠かせないスパイスで、最初にスパイスを油で炒めて香りを引き出す「スタータースパイス」として良く使われます。そのスパイシーな香りは料理のアクセントとして活躍します。
一方のキャラウェイシードは、爽快感のある甘い香りとほろ苦い味が特徴。辛味は全くなく、フェンネルシードやクミンシードと比べて香りも風味も穏やかなので、食材の臭み消しやスパイシーな料理のアクセントとして使われることはないようです。
このように見た目は似ていてもそれぞれに特徴が異なるので、実際に使い比べてみると面白いかもしれません。
キャラウェイシードは肉、野菜をはじめ、様々な料理に使われます。代表的な料理としては、ドイツ料理の「ザワークラウト」。ザワークラウトとは塩漬けしたキャベツを発酵させたもので、キャラウェイはこの料理には欠かせないスパイスとされています。また、「キャラウェイチーズ」と呼ばれるチーズもあるように、チーズ料理との相性も抜群です。
プチプチとした食感が特徴のキャラウェイは、ケーキやクッキーといった焼菓子やパンなどにもよく使われます。焼くことで甘い香りが立ち上がるので焼菓子にはピッタリのスパイスと言えるでしょう。ちなみに、ライ麦パンのプチプチはライ麦の種子ではなくキャラウェイが使われていることが多いのだとか。
キャラウェイの用途は料理だけにとどまらず、実はリキュールのフレーバーとしてカクテルにも使われており、ポピュラーなものとしては、イタリアのリキュール「カンパリ」が有名です。また、爽快感のある香りと味わいを持つキャラウェイは食後にハーブティーとして飲むと、胃をスッキリさせてくれるそうです。
今まであまり馴染みがないと思っていた方も多いかもしれませんが、意外にも古くから様々な用途に利用されてきたキャラウェイ。ぜひ、この機会に取り入れてみてはいかがでしょうか。
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現在では、日本でも様々な種類のスパイスが流通し、日々の食卓に取り入れている方も多いと思います。とはいえ、見た目が似過ぎて違いがわかりにくいために、その魅力を見過ごされているスパイスがあるのも事実。今回はそんなスパイスとして「キャラウェイ」をご紹介。似ているスパイスとの比較を含めてお話ししたいと思います。