2019/08/09
生唐辛子が手に入るのは、8月から9月にかけての約2ヶ月の間だけ。
生唐辛子は夏季限定の「季節もの」なんですよ!
唐辛子には食材を辛くする以外に、実は2つの大きな役割があります。
1つは唐辛子の色素である「真っ赤な色をつける」こと。餃子に使うラー油や担々麺などがその例です。
そしてもう1つが、季節限定の生唐辛子にある「柑橘系の香味をお料理にプラスする」ことなのです。
あまり知られていませんが、辛味を期待して使う乾燥唐辛子とは違って、柑橘系の爽やかな香りが生唐辛子の魅力の1つなのです。
この柑橘系の爽やかさは、他のスパイスのように、スパイス特有の香りが料理全体の香味になるほど強くはありません。
しかし、そのフルーティーな香りは、辛味と一体になって、お料理に何とも言えない風味をプラスしてくれるのです。
例えば、ジャマイカには「ジャークチキン」という有名なスパイシーチキンがあります。
クローブや胡椒などと一緒にウェットなペーストを作り、鶏肉を漬け込んでグリルするのがジャークチキン。
ジャマイカではこのジャークチキンに「スコッチボネット」という種類の生唐辛子を使います。
「スコッチボネット」は、私たちに馴染みの深い「鷹の爪」のような細長い唐辛子ではなく、パプリカを小さくしたような、少しぽってりとした形状です。色も、赤・オレンジ・黄と何色かあり、強い辛味と甘味が特徴です。
ジャマイカに住んでいた友人は、オールスパイスやタイム、青ねぎなど、他のどのスパイスでもなく「スコッチボネット」が入っていないと、本場のジャークチキンの味にならないと言っていました。
これが、唐辛子が辛味だけでなく、香味も大切なことを表している良い例だなと思います。
エスニック料理はしばしば、ニンニクや生姜、たまねぎ等とスパイスをすり潰して、ナンプラーやパームシュガーなどの現地の調味料を混ぜ合わせたソース(「つけだれ」のようなもの)が料理の決め手となります。
肉と野菜をスパイシーソースで和えたタイ東北部の料理などには、緑色の小さな「ブリッキーヌ」というタイ唐辛子を使います。
タイで1年暮らした後、帰国して初めてタイ料理を作った時に、「青唐辛子なら千葉県産でも良いかな?」と、手近なところで手に入る生唐辛子を使ったら、私の知っているバンコクの味、私の作りたいタイ料理の味にならなかったことがありました。
もちろん友人たちは「美味しい!おいしい!」と食べてくれたのですが、美味しくてもそれは私の求める現地の味ではなかったのです。
この微妙な辛味と旨味の間にある、なんとも言えない風味をだすのに、生唐辛子の香味が関係しています。
辛い料理は特に、タイの小さな青唐辛子「ブリッキーヌ」や、ジャマイカの「スコッチボネット」のように、唐辛子の香味が、その国特有の現地の味と切っても切れない関係性を持っているのです。
日本にも、アジアンスーパーマーケットや南米食材店など、現地特有の食材を扱うお店が沢山あります。
例えばタイ料理であれば、新宿の職安通りに「アジアンスーパーストア」があり、そこには冷凍されたタイの唐辛子が何種類も売っています。
中南米料理の材料であれば、五反田の駅前の雑居ビルの中に、中南米食材店があります。
有名なペルー料理、ジャガイモとゆで卵の「パパ・アラワンカイナ」にかける黄色い唐辛子ソースに使う「アヒ・アマリージョ」のペーストなども手に入れることができます。
タイ料理を作るなら「ブリッキーヌ」、ペルー料理なら「アヒ・アマリージョ」、メキシコ料理なら「ハラペーニョ」、そんな風に生の唐辛子を求めて、各国のスーパーマーケットを巡ってみるのも楽しいです。
1袋に沢山入っているので、数人で出かけてシェアするのがオススメです。
冷凍保存しておけば、かなり長い間使うことができます(冷凍で販売)。
唐辛子には辛味だけでなく、「柑橘系の香りもあるんだな!」
そんなことを思いながら、今年の夏は辛い料理を味わってみてくださいね。
ブレンドスパイス研究所|スパイスコーディネーター
植物の種や葉、果実、蕾などを乾燥させたスパイスを調合していると、その複雑な香味が知らない国やそこに暮らす人々を感じさせてくれます。
スパイスは異国とわたしを繋げてくれる『特別なアイテム』であると同時に、わたしをメンテナンスしてくれる『癒しのアイテム』でもあります。
「スパイス」を通して皆さんと繋がり、皆さんも新しい何かにワクワクできたら!そんな思いを込めて、スパイスセミナーをはじめとした、スパイスに関わる様々なお仕事をさせて頂いています。
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